お父様が高齢であることから、今のうちにお父様名義の自宅を、相続人であるN様の名義にできないかとの相談です。高齢とはいえ法律行為を制限する必要が全くない様でしたので、「贈与契約」を締結して贈与による所有権移転、又は「売買契約」を締結して売買による所有権移転することは可能であることを説明しましたが、高額な贈与税や不動産取得税は支払いたくないとのことで、何とか「相続」を原因に名義を変える方法はないかとのことです。残念ながらそれは不可能です。旧民法下では隠居して家督を譲れば名義変更が出来ましたし、大昔に家督相続したものの登記名義の変更をしていなかった場合、「家督相続」による名義変更は現在でも稀に存在しますが、現行民法下での新たな家督相続は存在しえません。将来起こることになっている名義の変更を保全するために、仮登記という制度はありますが、相続は法律行為ではなく「事件」、つまり出来事ですから、そもそも保全すべき権利も請求権も現在存在していないのです。贈与も売買も選択肢に無ければ、あとはN様を相続人に指定する遺言書の作成がありますが、お父様存命中の相続による名義変更はどうしても不可能です。