お亡くなりになったご主人名義の自宅の相続登記を、いつかはしなければならないと思いつつ、何年もそのままにしてしまったK様ですが、理由をお伺いすると、自宅の権利書が見つからないからというものでした。ご主人は几帳面な方だったので、無いはずはないと、思い出しては探していらっしゃったそうです。このように相続登記に権利書が必要と思われている方は意外と多いようです。
そもそも不動産の名義を換える場合に権利書(平成17年の改正以降は登記識別情報に順次変わっております。)を添付するのは、その名義変更により所有者ではなくなる人に、本当にその名義変更をしてよいのかどうかの意思確認をするためです。権利書というものは本来、登記名義人だけが持っているものなので、それを提出させることで登記申請の意思確認をするのは合理的だと言えます。ただし、相続の場合は所有者でなくなる人はすでにお亡くなりになっています。意思確認をすることに意味がありません。
ところで、相続による名義変更で権利書を添付できると、手続きがスムーズになる場合はあります。例えば、お亡くなりになった方の最後の住所が登記簿上の住所と異なり、その住所の変遷を住民票や戸籍の附票等で証明できない場合です。これらの書類は保存期間の満了によって破棄されてしまうので、引っ越しなどで住所が変わっていながら、登記簿上の住所を変更しなかったりすると、住所の変遷を証明できなくなることはよくあります。そのような場合に、亡くなった人が権利書を持っていたなら、登記名義人と同一人物である判断して差支えないと考えられるからです。もっともこのような場合でも権利書を提出することが唯一の対処法であるわけではありません。