2か月ほど前にお父様を亡くされたT様に、消費者金融からお父様の借入債務を相続したので返済してほしい旨の通知がまいりました。晩年のお父様は預貯金の管理ができる状態ではなかったので、T様がお父様に代わって管理をしていたのですが、そのT様が通知の来るまで債務の存在に気付かなかったことが不思議でなりません。
いずれにしてもT様がお父様の預貯金を管理し始めたのは5年以上前になりますので、最後の返済から少なくとも5年は経っていることになり、この債務は既に時効により消滅しているはずです。ただし、現段階で時効を援用していないため、その時効の効果が確定していないだけです。お父様を相続したのはお母様とT様だけですので、お二人で時効援用通知を内容証明郵便で送ることにいたしました。
債務を相続させられることを回避するために、相続の放棄の手続きを踏むのが一般的ですが、相続の放棄ですとわずかでも残っているプラスの財産も相続できないことになってしまいます。残された債務が時効により消滅していることが明らかであれば、消滅時効の援用も一つの選択肢となります。
ただし問題が一つあります。消滅時効の援用は相続の単純承認とみなされることです。そのため、万が一まだ時効により消滅していない債務が新たに発見されてしまうと、この債務の相続を回避するための相続の放棄はもはやできなくなるということです。T様のお父様のケースでは、晩年5年間のうちに別の借り入れをしたことは考えられなかったので、消滅時効の援用で問題ないと思われます。