お亡くなりになられた方が遺贈や生前贈与をしていたために、本来相続することが出来たはずの人が全く相続できなくなったり、ある一定の限度を超えて相続分が少なくなったりした場合、せめてそのある一定の限度を満たすまでは戻してほしいと請求することが出来る権利を「遺留分減殺請求」といいます。この権利は兄弟姉妹以外の相続人に認められた権利です。
もっとも、一度財産が動いていながら、後からこれを一部否定することは、法的安定性の面からみると非常に問題がある制度といえます。そのため、なるべく法的安定性を崩さない様、遺留分が侵害された場合の請求先の順番が決められています。もし遺留分侵害の原因が「遺贈」と「贈与」であった場合、遺贈に対して請求してみて、なお不足が満たされないときに、贈与に対して請求することができるという順番に関する決まりです。お亡くなりになられた方の単独の意思表示である遺贈は、お亡くなりになられたときにはじめて効力が生じるので、遺贈によって財産が動いてもあまり時間は経っておらず、これを後から覆しても法的安定性を損なう度合いはやや低いと言えます。それに対し贈与は契約ですから、贈与者と受贈者を法的に拘束しているので、遺贈よりは減殺請求に対し守られるべきと考えてもおかしくはありません。また、原則お亡くなりになった方が1年以上前になさった贈与には、もはや減殺請求ができないことにもなっております。
なお、遺留分減殺請求の法的性質については、平成31年の夏に大きく改正されます。現在は遺留分減殺請求がなされると、例えば目的物が所有権であれば当然に「共有関係」になるのですが、改正後は遺留分侵害額に相当する「金銭債権」が発生することとなります。