遺産分割協議のしかたについて、形式的な決まりは無く、その結果を記録する遺産分割協議書についても書き方等に特に定めはありません。ただし後々のトラブルを回避するために少なくとも書面化しておくべきですし、その協議に基づき土地建物の名義変更をするのであれば、必ず実印を押印した遺産分割協議書が必要となります。
H様は祖母名義の不動産を相続した相続人の一人です。実は祖母が亡くなったのは何十年も前で、H様の親の代が相続手続きをしてくれていたら、さほど難しい事例ではなかったのですが、今まで誰も手を付けなかったことによって、相続人が大変な人数に膨れ上がってしまったのです。H様は根気よく他の相続人に連絡を取り続け、なんとかH様が相続することに同意してもらえましたが、相続人は日本全国に広がっているどころか海外居住者もおり、どう考えても一堂に会して遺産分割協議書に署名や押印をしてもらう状況にはありません。相続人が連署する形の遺産分割協議書を郵送でやり取りするのは紛失のリスクもあるので避けたいところです。
そこで、一枚の遺産分割協議書には一人だけしか署名押印しない書式で作成し、それを相続人全員分集めるという形で対処することにいたしました。そもそも遺産分割協議書の作成方法についての定めは無いわけですから、この様な形でも問題ありません。海外居住者についても、これならば現地の大使館等でサイン証明を受けられるので、実印の押印と印鑑証明の添付に代えられて便利です。