数年前に自筆証書遺言を作成されたT様が、遺言内容を変えたいとご相談にみえました。遺言は、遺言をする人の最後の意思表示ですから、本人の意思でいつでも書き直すことが出来ます。ただし注意しなければならないことは、遺言書の訂正は適切な方式に従った遺言書によってしなければならないということです。つまり、元の遺言が自筆証書、公正証書のどちらであったとしても、訂正するために作成する遺言は自筆証書で作成しても公正証書遺言で作成してもどちらでも構わないものの、その遺言書に形式的な不備があり無効であれば訂正の効果が生じないということになってしまうことです。
T様が作られた前の遺言は自筆証書遺言で、今回訂正のために作成する遺言も自筆証書で作成する事になりました。ところが変更内容も本質的な変更が多く、前の遺言を訂正する遺言書を作成することと、前の遺言を破棄して新しい内容の遺言書を作り直すことでは大して労力が異ならないようです。あえて訂正のための遺言書を作成するよりは全く新しい遺言書を作成したほうが確実です。結局、前の遺言書を破棄して新規に作成する事にいたしました。
もともと遺言書の撤回や取り消しついて様々な決まりがあるのは本人亡きあと本人に真意を問えないためです。T様の様にご本人がご自身のしっかりしたお考えから遺言内容を変えたいということであれば、何も撤回や取り消しの細かい決まりは気にせず、前の遺言書をしっかり(物理的に)破棄したうえで新規作成したほうがよろしいと思います。