S様のお父様が亡くなられ、相続手続きにご相談にみえました。特に遺言書は無いようなので、相続人全員で遺産分割協議を行う方向で調整に入りました。
ところがS様が以前お父様から「自分にもしものことがあったら読んでほしい」と一通の封筒を渡されたたことを思い出されたのです。早速探してもらってお持ちいただいたところ、タイトルは特にない無地の封筒で、印鑑で封印がなされています。お父様が封筒を渡したときおっしゃった言葉から自筆証書遺言の可能性が高く、もし遺言書であった場合、封印されたものは家庭裁判所で相続人またはその代理人の立ち合いがなければ開封してはいけない決まりになっております。そこで早速く家庭裁判所に検認手続きの申し立てをいたしました。検認手続きというのは、家庭裁判所が自筆証書遺言の存在を確認し、検認後の偽造・変造防止するためのもので、遺言書の有効性を確認するものではありません。ただし、遺言書の保管者がこの手続きを怠って勝手に開封したりすると過料に処せられてしまいますし、遺言書の内容が気に食わないからと遺言書を隠してしまったりすると相続人の立場を剥奪されてしまうので大変なことになってしまいます。
検印手続の日がきまり、相続人が家庭裁判所に呼び出されました。この呼び出しは相続人に立ち合いの機会を与えるためのもので、必ずしも全員が立ち会わなければならないものではありません。
裁判所書記官が開封した封筒からは形式上全く問題がない有効な自筆証書遺言が出て来ました。S様がお父様から預かった封筒を慎重にお取り扱いいただいたからこそ適正な手続きがとれた事例です。