数十年前に亡くなった祖父名義の土地があり、このまま放っておくと、やがては所有者不明土地になりかねないと、孫にあたるH様が相続手続きを開始されました。祖父が亡くなった当時の相続人はH様の母と叔父叔母の三人です。この三人はすでに亡くなっておりますので、遺産分割協議をする相手方はH様から見るとイトコ(従兄弟、従姉妹)に当たる人たちで、ほんの数人でした。中には疎遠になっている人もおりますが、このくらいの人数が相手方なら何とか話をまとめられそうだと思っておりました。ところがあることがきかっけで、相続人の数が一気に3倍以上に激増したのです。
従兄弟の一人がすでに亡くなっており、この従兄弟には子供がいなかったので、相続人は従兄弟の奥様だけです。代襲相続の問題では無く、この従兄弟が祖父の財産を相続した後亡くなっていることから、この奥様が従兄弟を介して祖父の財産を相続したのはやむをえません。ところがH様が相続手続きを始めて間もなく、この従兄弟の奥様が亡くなってしまったのです。これが相続人が激増する原因となりました。
この奥様のご主人は亡くなったH様の従兄弟で、また子供がいなかったわけですから、相続人は奥様の兄弟姉妹となります。この世代の方は兄弟姉妹が多い方が多く、この奥様も7人の兄弟姉妹がおりました。その中にはすでに亡くなった方もおられ、そうなるとその方の相続人が祖父の相続人として関係してきてしまいまうのです。つまり、従兄弟を介して相続した奥様を介して奥様の兄弟姉妹が相続人になり、またその兄弟姉妹を介してさらに次の代が相続人になるのですからきりがありません。イトコの配偶者までは多少の付き合いがあることもありますが、イトコの配偶者の兄弟となると全くの他人です。
もし、従兄弟の奥様が亡くなる前に、遺産分割協議がまとめられていたら、こんな苦労はしなかったわけですから、相続手続きは早め早めに対応するに越したことはないと痛感した事例でした。