自筆証書遺言の長所といえば、作成に費用がかからないことと、いつでも気が向いたときに熟考しながら書けるというところにあると思います。T様は公正証書遺言の作成を希望されていたのですが、公証人に希望する遺言の内容を伝えるために箇条書きにしようとするとかえって考えがまとまらず。思いついたときに思いついたまま書ける自筆証書遺言で作成することに変更なさいました。ただ、自筆証書遺言は形式的な不備が原因で無効になることがありますので、その辺の確認はさせていただくことになりました。
まずは本文全文を自筆で書くこと、これは問題なく直筆で書かれております。次に作成日付は日付印(日付を押印するための印鑑)で捺されております。これはいけません。作成日付も必ず自分で書かなければなりません。作成者氏名の署名と押印は問題ありません。ただ印鑑は認印だそうです。そのために無効となることはありませんが、将来自筆証書遺言の信憑性に疑義が入ることに備えて実印を押印した方がよろしいでしょう。また、本文に訂正箇所が何か所かありました。誤った部分を二重線で消して署名と一緒に押した印鑑を訂正印として押してあります。これもダメです。余白等に訂正場所を行数などで特定し、「変更した旨を付記しして特にこれに署名し」て、その変更箇所に印を押すようわざわざ民法に規定されております。
自筆証書遺言はお手軽なのが長所ですが、形式的な要求が多いことが短所といえます。