相続税の申告が必要かどうかは、原則相続財産の総額が基礎控除を超えるか否かで決まります。基礎控除は定額控除が3,000万円、法定相続人比例控除が一人600万円となりますので、相続人の数が多ければ、それだけ比例控除枠が大きくなり、相続財産の総額によっては相続税の申告の要否にも大きな影響が出て来ます。
A様の養母が亡くなりました。残された相続財産は総額約5,000万円ほどです。A様は唯一の相続人でしたので、基礎控除は定額控除の3,000万円と比例控除の600万円で合計3,600万円だけ。相続財産の総額を5,000万円とすると、1,400万円は基礎控除額を超過するので、相続税の課税対象となります。ちなみにこの額ですと税率は15%で50万円の控除がありますので、相続税は160万円ほどとなる見込みです。
A様の養母は実の子がおらず、尊属もすでに亡くなっていたため4人の兄弟が相続人になるはずだったところ、疎遠となった兄弟に相続させるよりはと、日ごろ面倒を見てくれていたA様を養女になさった経緯がありました。もし4人の兄弟が相続人であったならば、基礎控除は5,400万円となり、相続税を納める必要はありませんでした。そのうえでA様に相続財産の一部を遺贈なさるなど別の方法をとれば、かなり違った結論になったように思われます。この様な問題を相続税対策の面だけで論じるのはどうかと思いますが、いろいろな角度から検討なさった方がよろしいようです。