遺言者が遺言により法定相続とは異なる相続分を指定する場合であっても、「遺留分に関する規定に違反することができない」と民法に規定されております。遺留分というのは相続人に保証された最低限の相続分のことで、本来法定相続分が2分の1ずつとなる配偶者と子供の場合であれば、どちらか一方にすべて相続させると指定されていても、相続分が無いとされた方から、せめて半分は戻してほしいと要求することができる権利です。ただしこのような遺言がなされていても、その遺言が無効になるというわけでは無く、遺留分を無視(侵害)された相続人が、遺留分を取り戻す請求(遺留分減殺請求)をしない限り有効であるとされております。
N様の推定相続人は3人の子供達ですが、ある事情からそのうちの一人だけ相続分がない旨の遺言書の作成を希望されておりました。遺留分に関する規定に違反しているのはご承知の上です。遺留分減殺請求には行使期間というものがあり、それは遺留分が侵害されたことを知ったときから1年、相続開始から10年とされています。この間に遺留分減殺請求がなされないという確証はありませんが、遺言書自体の有効性には問題がありませんので、N様のご希望に沿った遺言書を作成させていただきました。