成年後見制度には「法定後見制度」と「任意後見制度」の二つがあります。法定後見制度は、ご本人の判断能力に支障が出てから、親族などによって家庭裁判所に申し立てるもので、後見人の選任も裁判所によってなされます。申し立てに際して親族等を後見人にしてほしいと希望しても、必ずしも候補者が選ばれるとは限りません。むしろ、この制度に精通した専門家が選ばれることの方が多いと考えておいた方がよろしいようです。
F様はご自分の判断能力に対して今のところ全く心配されておりません。しかしながらいつかは判断能力が衰えることがあるでしょうし、その時、ご自分の財産を見ず知らずの第三者に管理されることに大変な不安をもっていらっしゃいます。自分の財産管理はできれば長女に任せたいというお考えもお持ちでした。そこで任意後見制度を利用することになさいました。任意後見契約は、本人と将来財産管理を任せたい人との間に取り交わされる契約で、公証役場において公正証書で作成します。判断能力が十分な契約時点では特に何も委託しませんが、将来判断能力が低下したその時に後見事務を委託するという契約形態です。この契約も契約である以上、十分な判断能力が無ければ締結度来ません。判断能力に心配がない今だからこそこの制度の利用を決められたF様、賢明なご判断をなさったと思います。