S様は自宅のマンションをご子息と共同で購入され、持分をそれぞれ2分の1で共有されております。そのご子息がお亡くなりになってしまいました。ご子息は生涯独身でお子様がいなかったので相続人は両親となりますが、実はS様と亡きご子息の母親に当たる方とはずっと昔に協議離婚しております。離婚によりS様と元の奥様の間にはお互い相続権はありませんが、このことは親子間の相続関係に影響はありません。自宅マンションの亡きご子息持分をS様が単独で相続するためにはどうしても元奥様との間で遺産分割協議をする必要があります。ところがこの元奥様が現在どこにいるのか皆目見当がつかないのです。可能な限りの親戚筋に当たってみましたが、ほとんど情報がありません。
このように八方塞がりでどうしようもない場合、最後の手段として「不在者の財産管理人」の選任を家庭裁判所に申し立てる方法があります。不在者の財産管理人とは、財産を残しておきながら財産の管理人を置かないまま住所又は居所を去り、容易に戻る見込みのない人がいる場合に、利害関係人の保護を目的として選任されるものです。また、管理行為のみならず、必要であれば「不在者財産管理人の権限外行為の許可」を得て処分行為をすることもできます。本事例であれば、遺産分割協議が必要な財産が残されていることになり、遺産分割協議は処分行為に当たるので、不在者の財産管理人の選任と、権限外の許可を得れば遺産分割協議を有効に成立させることが出来るようになります。