以前公正証書遺言を作られたS様からご質問をいただきました。S様の遺言にはある特定の不動産を相続人の一人である長男に相続させるとあり、遺言執行者については私をご指定して頂いております。もっとも遺言執行者を指定していても、相続による所有権移転登記については長男が単独で申請することとなり、遺言執行者の関与は必要ない旨を、遺言書の内容を打ち合わせたときご説明させていただいた記憶があります。
S様は相続法の改正を特集した雑誌をお読みになり、令和元年7月1日より、遺言執行者の職務権限が改正され、この様な場合も相続人の単独申請ではなく、遺言執行者によって申請しなければならなくなったとご理解されたため、その理解で正しいかどうか確認なさりたかったのです。
確かに令和元年7月1日に施行される改正相続法では、遺言などにより法定相続分を超えて不動産を相続した場合、その旨の登記をしなければ第三者に権利を主張できないとしています。そのため遺言執行者は遺言の内容を実現するために、登記申請もしなければならなくなりました。ただしこの新しいルールが適用されるのは、令和元年7月1日以降に作成される遺言からです。
平成時代に遺言書を作成されたS様はまだまだお元気なご様子ですので、令和が何年になろうとも、S様から長男への相続による所有権移転の申請は、長男の単独申請ですることになるわけです。