長年連れ添った事実上の夫婦であっても、正式な婚姻届けを出していない内縁の夫婦間では、互いに相続権がありません。どんなに長いこと共同生活を続け、周囲からも事実上の夫婦とみなされていても、戸籍を共にしない以上、戸籍制度がある日本においては相続権はありません。
I様ご夫婦は、長年連れ添っていながら婚姻届けを出していない、いわゆる事実婚の関係(内縁の関係)です。なぜ婚姻届けを出して正式な夫婦にならなかったのかは、様々な理由が考えられ、I様ご夫婦の事例をご紹介しても意味はありません。I様ご夫婦に子供は居らず、I様の推定相続人はI様の兄弟姉妹ということになります。I様としてはなんとかパートナーに財産を相続させたいとお考えです。
そこで遺言書を作成して財産を「遺贈」することにいたしました。相続人ではない人に相続に近い方法で財産を承継させるには、遺贈はほとんど唯一の選択肢といえるかもしれません。ただし、相続人ではない人への遺贈ですから、相続税の基礎控除、税率の2割加算など、通常の相続とは異なる税法上の取り扱いがあることはやむをえません。