遺産分割協議の様式についての決まりはありません。ですから口頭でなされた遺産分割協議も有効です。もっとも、遺産分割協議の結果に基づき不動産の登記名義の変更など具体的手続きをする場合は、相続人全員が実印を押印した遺産分割協議書の作成が必要ですし、遺産分割協議の内容を協議成立後に利害関係に入った人に主張することもできません。
M様のお父様がお亡くなりになり、相続人であるM様とその兄弟が遺産分割協議を行い、不動産についてはM様が単独で相続することになりました。ところがM様への登記名義の変更を急ぐ必要がなかったので、遺産分割協議書はいつか不動産登記を申請をするときに作ればよいと考えて作成しなかったそうです。
その数年後、遺産分割協議をした兄弟の一人が亡くなってしまいました。亡くなった兄弟の相続人から見れば、相続手続きがなにもなされていないM様のお父様の不動産については、亡くなった兄弟の法定相続分の限度で、亡くなった兄弟を介して自分たちが相続したと考えて当然です。M様が不動産を単独相続する旨の口頭による遺産分割協議が有効だったのは事実ですが、これを亡くなった兄弟の相続人に主張する術がない事も事実です。結局亡くなった兄弟の相続人から法定相続分に見合った財産の分割を要求されてしまいました。これに対して口頭による遺産分割協議の有効性を主張することは出来そうにありません。