幼いころにお母様を亡くされ、男手一つで育ててくれたお父様に酬いるため、長女のM様はご結婚もあきらめ、お父様を献身的に介護し最後までみとりました。相続人はM様の他に長男である兄がおります。この兄は今まで介護を手伝うことはもちろん、経済的支援も一切してくれませんでした。二人だけの兄弟ですから、相続分が均等なことは理解しているつもりですし、父の介護によって相続分が優遇されるなど夢にも思っていなかったのですが、兄が当然のように相続財産の半分を要求してきた時、M様としてはどうしても納得がいかなかったのです。
均等であるはずの相続分が、それ故に不平等になってしまうことを想定して、民法には「寄与分」という制度を設けています。これはお亡くなりになられた方に特別な貢献をした相続人は、他の相続人より多く財産を相続できるとするものです。もちろん親子間には扶養義務がありますから、単なる療養看護では寄与分が認められることは難しいのですが、M様の場合は寄与分の存在が十分認められる事例と考えられます。
本来寄与分は相続人全員の協議で定めるものなのですが、M様と兄との様に円満に協議を成立させることが難しい場合があり得ます。このような場合は家庭裁判所に寄与分を定めてもらう調停申手続きがありますので、これを利用することによって中立的な判断をあおぐこととなります。