登記簿謄本は3つのパートに分かれております。土地や建物の所在や構造などを記録する「表題部」、所有権に関する事項を記録する「甲区」、担保権等所有権以外の権利を記録する「乙区」です。この度お受けした相続登記ですが、土地の登記簿には甲区がありましたが、建物の登記簿には表題部だけで甲区がありません。表題登記をするのは義務ですが、甲区乙区の登記は権利なので、たまに見かけることではあります。このような場合、亡くなった方の名義で所有権保存登記をしてから相続登記をするまでもなく、直接相続人の名義で所有権保存登記をしてしまえば済むことです。
注意すべき点は、当初から共有だった建物で、共有者中の一人が亡くなり、他の共有者が相続した場合の所有権保存です。T様はお父様、お母様とそれぞれ3分の1ずつ建物を所有し、表題登記だけをしておりました。この度お父様が亡くなってその持分をT様が相続したので、T様3分の2、お母様3分の1で所有権保存登記をすることに問題はありません。しかしながら、ただこれだけですとT様が当初から有していた持分と相続によって取得した持分が分からなくなってしまいます。登記簿謄本は正確に権利変動の過程を記録すべきなので、この場合は、
「所有者(持分3分の1につき被相続人〇〇(父の名))持分3分の2T」と登記します。