相続手続きには、お亡くなりになられた方の出生に遡る戸籍が必要とされていますが、どこまでの範囲の戸籍が必要となるのかは、相続のパターンで大変異なってきます。遺言書が遺されていて相続分の指定がなされていれば、法定相続人を特定する手続きが必要ありませんので、その遺言書が効力を発生したことを証するため、被相続人がお亡くなりになったことの記載がある戸籍と、相続分の指定を受けた相続人の現在の戸籍があれば足りることになります。極端な事例では一通の戸籍で足りることもありえます。
これに対して、お子様がいないご夫婦の一方が亡くなった場合の相続で、相続人が生存配偶者と被相続人の兄弟姉妹なる場合でかつ遺言書が無い場合は、取得すべき戸籍が大変多くなることを覚悟する必要があります。他に兄弟姉妹がいない事を証明するために、お亡くなりになられた方の出生に遡る戸籍では足りず、ご両親の出生に遡る戸籍まで収集する必要が出てくるからです。
ご主人を亡くされたM様がまさにこのパターンでした。数年前お父様がお亡くなりになった時の相続手続きはお父様が遺言書を遺されていたため、非常に簡単だったため、今回もご自分でするつもりいらっしゃったそうですが、取得すべき戸籍の範囲があまりに異なるため、少しだけ手をお付けになったところで当事務所にご相談にお見えになりました。実際、戸籍を請求した市区町村は10か所を超えましたので、ご自分で集めるのはかなりのご負担になったであろうと思われます。