遺言書等が無い場合の相続手続きは、相続人を確定することからスタートいたします。多くの場合、お亡くなりになられた方の出生に遡る戸籍を取得することによって確定できるはずですが、亡くなられてから相続手続きを始めるまでにある程度の年数が経過すると、相続人の範囲が変わってしまい複雑化することがあります。U様が始められた相続手続きもこれに該当し、相続人を確定のために取得するべき戸籍の数が驚くほど多くなってしまっておりました。手続きを要する相続財産は不動産だけでしたが、数が多く、また複数の管轄にまたがるもので、一つ一つ手続きをしていったらいつまでかかるか分かりません。
平成29年5月にスタートした法定相続情報証明制度は、この様なケースに対処するには非常に便利な制度です。複数の管轄にまたがる不動産の相続手続きをするには、出生に遡る戸籍を何セットか用意するか、一か所ずつ時間をかけて処理するしかなかったのですが、この制度により法務局が発行する「法定相続情報一覧図」が往来の出生に遡る戸籍の束の代わりになりますので、必要な枚数を発行してもらうことで、すべての不動産の相続手続きがいっぺんにできることとなりました。
さらに便利なのは、この申し出をすることができる法務局の選択肢の広さです。亡くなった方の本籍地、最後の住所地、相続すべき不動産の所在地の法務局に申し出ができるだけではなく、申出人の住所地を管轄する法務局でも受け付けてくれるのです。U様のお住まいは、手続きをすべき不動産とは全く無関係の場所でしたが、U様の住所地を管轄する法務局発行の法定相続情報一覧図で、日本全国どこの法務局の管轄の不動産でも相続手続きができるわけです。