M様のお父様が亡くなり、M様とお兄様が相続いたしました。主な相続財産は自宅の土地と建物です。お兄様は結婚後、仕事の関係で地方に暮らしており、自宅はお父様とM様のみ暮らしておりました。そのような事情もあり、M様としては自宅だけ単独で相続させてもらえれば、その他の財産は全てお兄様に相続してもらって構わないと考えておりました。
しかしながら、お兄様としても自宅の土地建物の評価額と、それ以外の相続財産の評価額があまりにかけ離れているため、納得のできるものではありません。土地建物の評価額に対して不足する相当額を代償金として支払うことを要求してきました(代償分割)。M様にはそれを準備するだけの資力がありません。とりあえず土地建物を兄弟で共有することにしても(共有分割)、いつかは共有物分割でまた対立することになる可能性が残ります。
当事者の話し合いが平行線をたどる様になってしまいましたので、やむを得ず家庭裁判所の遺産分割調停手続を利用することにいたしました。調停手続きでは家事審判官と調停委員で構成する調停委員会が相続人と一対一で面談し、厳格な裁判手続きと異なる柔軟な解決策を考えてくれます。遺産分割を未解決のまま長年放置しておくと、ますます手におえない事態になることがありますので、裁判所の調停手続きを利用してみることも大いに検討の余地ありと思います。