Y様のお父様が亡くなられました。相続人はお母様とY様を含む兄弟3人です。ところがお母様はかなり認知症が進んでおり、実際に「後見」相当と診断されております。このような場合、法律行為は全て成年後見人によってなす必要があり、遺産分割協議も例外ではありません。遺産分割協議に先立って、家庭裁判所に成年後見の申し立てをして、選任された後見人と遺産分割協議をすることになります。また、後見人には本人と利害関係を持っている人はなることが出来ませんので、Y様のような相続人の一人が親族後見人として立候補しても認められることはありません。
Y様としては、自分がお母様の成年後見人になって、スムーズな遺産分割をするつもりがあったようですが、これはなかなか通るものではありません。また、裁判所によって選任された後見人は、裁判所の監督の下で後見業務を行いますので、成年被後見人が法定相続分より不利となる遺産分割はまずいたしません。本来、本人を保護し支援する制度ですから、遺産分割協議だけを目的とした成年後見の申立てはかなり問題があると言わなければなりません。