建物を新築した場合、建物の所在や構造などを記録する「表題部」を登記する申請をしなければなりません。この登記を申請することは義務で、この建物の所有権を取得した方は、取得から一か月以内に登記申請をしないと10万円以下の過料に処せられることになります。通常、この表題登記が済んだ後、所有権に関する事項を記録する「甲区」に誰が所有者であるかを公示する所有権保存登記をすることになるのですが、こちらは義務ではありません。そのせいではないと思いますが、所有権保存登記が無い建物がたまに見受けられます。その状態で表題部所有者に相続が発生したらどのような登記申請になるでしょうか。
T様の事例は、T様とお父様お母様がそれぞれ3分の1ずつの持分で建物を所有し、表題登記だけをして所有権保存登記をしていなかった事例です。この状態でお父様がお亡くなりになり、お父様名義の不動産は全てT様が単独で「相続」するとする遺産分割協議が成立いたしました。この場合、権利変動の変遷を正確に登記簿に反映させることを優先させれば、T様とお父様お母様の3人で所有保存登記をしてからお父様の持分を「相続」と登記原因としてT様に移転することになるはずです。しかしながら、不動産登記法では所有権保存登記は相続人から申請できると規定しておりますので、直接T様の持分を3分の2、お母様の持分を3分の1とする所有権「保存」登記を申請することが出来ることとなります。ただし、T様が当初から有していた持分と相続によって取得した持分が区別できるように「所有者(持分3分の1につき被相続人〇〇(父の名))持分3分の2T、3分の1○○(母の名)」と明示する必要があります。