遺産分割協議は相続人全員でしなければならないのですが、例えば遺産分割協議をしないで何年も経過してゆくうちに、相続人が一人また一人と亡くなって、ついに相続人がたった一人になってしまった場合、遺産分割協議をするまでもなく、その人が当然に単独で相続することになるのでしょうか。
ずいぶんと前にK様のお父様が亡くなられました。相続人は息子であるお兄様と娘のK様の2人です。預貯金の相続手続きは法定相続によって済ませたものの、ご自宅の土地建物の相続についてはとくに話し合いはしておりませんでした。そのうちお兄様が亡くなってしまい、ついにはお父様の相続人はK様だけになってしまったのです。K様としては自宅の名義を自分にするつもりはなかったものの、お父様のままにしておくのもまずいだろうとの思いで相続手続きを開始されたのです。
ところがここに大きな思い違いがありました。お兄様には奥様とお子様がいらっしゃったのです。もちろん、その奥様とお子様はお父様の相続人ではありません。しかしながらお兄様の相続人ではあります。ここで重要なのはお亡くなりになった順番です。お父様が亡くなった時の相続人はお兄様とK様です。この段階で遺産分割協議をしていなかったわけですから、お兄様は法定相続割合によってすでに自宅の持分2分の1を相続しています。そのお兄様が亡くなったのですから、お兄様の持分はお兄様の奥様とお子様にそれぞれ4分の1ずつ相続されてしまいました。この段階でお父様名義のままの自宅につき遺産分割協議をするとすれば、その相手方は亡きお兄様を相続したお兄様の奥様とお子様ということになります。実はK様とお兄様の奥様はあまり仲がよろしくなかったらしく、意地の張り合いから遺産分割協議成立までとんでもない時間がかかってしまいました。