T様のご主人様がお亡くなりになり、ご自宅の名義変更のご依頼にT様がお見えになりました。早速登記情報を確認すると、ご主人がお借入なさった住宅ローンの保証会社の抵当権が残っております。T様によると住宅ローンは数年前に完済し、その時銀行から抹消書類一式が送られてきた記憶があるとのこと。抹消書類を手に入れただけで安心してしまい、登記申請を後回しにしているうちに忘れてしまうよくあるパターンです。
この度の相続による名義変更登記と同時に抵当権の抹消登記も申請することにいたしました。問題は、抹消書類の中に入っている委任状が、数年前に完済したときの代表者の物で、現在の保証会社の代表者は別の人に変わっているということです。このような場合、銀行にお願いして現在の代表者の名前で委任状を再発行してもらう方法もありますが、実はもっと簡単なやり方があります。
「不動産登記法」という法律には、登記申請の委任による代理権は、委任者の代表権が無くなっても消滅しないという定めがあります。すでに退任している代表者の委任状でも「代理権不消滅の記載」、つまり現在の代表者はBさんですが、委任状を発行したAさんは何年何月何日から何年何月何日まで代表権があったので、代理権は無くなっていませんという一筆を書いて申請すれば、前の代表者の委任状で大丈夫というわけです。
T様の事例は、相続登記がきっかけとなって、抵当権の抹消登記につながりました。もしこのようなきっかけが無く何年も放置していたら、抵当権者の会社が解散してしまったなど抹消登記が大変難しくなることもあり得ます。抹消書類を受け取ったら、なるべく早く抹消登記申請をなさってください。