お父様が亡くなり、K様他三人の兄弟が相続いたしました。相続財産は自宅の土地建物と預貯金、有価証券です。三兄弟の相続分は等しく3分の1ずつですが、たまたま自宅の土地建物の評価額と、預貯金、有価証券の資産価値はほとんど同じです。K様は父親の介護をしながらずっと自宅で暮らしていたため、預貯金や有価証券は他の兄弟が相続してくれて構わないので、この自宅だけは単独相続させてもらいたいと考えておりました。他の兄弟も、不動産の評価額と預貯金等の額から異存はありません。ただし預貯金と有価証券の相続については話がまとまらず、まだ少し時間がかかりそうです。
そこで、自宅不動産をK様が単独で相続することだけを合意した遺産分割協議書を先行して作成する事にいたしました。不動産の場合、法定相続分より多く相続した部分は登記をしないとそのことを知らない第三者に主張できないため、不動産の相続登記を先に済ませる合理的な理由があるのです。そもそも一通の遺産分割協議書で、相続財産の全てを網羅する必要はなく、相続人が何度も集まって合意書面を作ることに抵抗がないのであれば、預貯金だけの遺産分割協議書や有価証券だけの遺産分割協議書を作成しても構いません。もっとも後からそれぞれの財産の評価額について疑問が生じない様、事前に各財産の評価についての合意をしておくことも大切です。