お父様がお亡くなりになり、A様他相続人全員で遺産分割協議をなさり、お父様名義のご自宅はA様が単独で相続することで合意いたしました。遺産分割協議の形式についての決まりは無く、口頭での合意も有効ですが、その合意に基づき土地建物の名義変更を法務局に申請する場合は、遺産分割協議書を作成する必要があります。そこで、A様ご自身でいろいろな書式のひな形をお調べになり、遺産分割議書を作成なさったそうです。相続人全員が実印を押し、印鑑証明も添付されていますので形式的には完璧です。ところが、念のために登記情報を調べてみたところ該当不動産がありません。それもそのはず、この遺産分割協議書に記載された土地建物の表示は住居表示だったのです。
遺産分割協議書は相続不動産がどれであるか登記簿謄本で特定できるように記載しなければなりません。その登記簿謄本は土地であれば「地番」、建物であれば「家屋番号」で特定されます。一方住居表示は住んでいる建物を特定するための番号で、郵便物の宛先として使われる「住所」です。住居表示が実施されていない地区では地番と住居表示が同じ場合もありますが、多くの場合異なります。自宅の相続登記ですから、普段使い慣れている住所で特定すれば足りるとお考えになるのはやむを得ない気がしますが、これでは相続不動産が特定できないため、遺産分割協議書は作り直しです。
ちなみにA様の事例では、見た目は一つの土地に一つの建物が建っているとしか見えなかったのですが、実際は土地の地番が2つに分かれている2つの土地でした。