会社の代表者を務められたN様のお父様が亡くなられました。お父様の事業はN様他相続人の皆様で引き継いだのですが、一つ問題があって、実はお父様所有の不動産を約20年前、お父様個人から会社へ売却なさってその旨の会計処理をしていたのですが登記名義を変えていなかったのです。
取締役が会社と売買などの利益が相反する行為をするときは、株主総会(取締役会設定会社においては取締り役会)の承認決議を要するのですが、N様のお父様と会社間の取引ではそのような決議があった記録がありません。ご依頼内容は、取引があった20年近く前に遡った日付をもって名義変更ができないかというものでした。
同じような事例が過去にないか調べたところ、承認決議のない利益相反取引は無効であるが、事後に承認決議があれば行為の時に遡って有効とする古い東京高裁の判決を見つけました。これを根拠に管轄の法務局に相談したところ、事後承認もあまりに時間がたっている場合は問題ありで限りなくグレーとは言いながら、もし登記申請されれば却下事由がないと回答をいただいました。
無事令和4年開催の株主総会で20年近く前の利益相反取引を承認し、過去に遡った登記原因日付で名義変更ができましたが、これは一般的に通用する事例とは思えませんので、今後同様の事例がありましたら事前に法務局に確認することにいたします。