亡くなられたN様の父親の遺品の中から遺言書の様なものが出て来ました。それは官製はがきの裏面に特定の不動産を相続人の一人に「ゆずります」とだけあり、作成した日と思われる日付と氏名の記載が有り、認印と思われる印鑑が押されていました。ただし遺言書という言葉は何処にもありません。これでその特定の不動産の相続登記が出来るのであればしてほしいとのご依頼です。
もしこれが自筆証書遺言であるのであれば裁判所の検認手続きが必要です。検印手続というのは検認手続の日において、確かに遺言書(らしきもの)が存在していることを確認してもらい、それ以降の変造ができなくなる手続きで、決して遺言書の有効性を確認するものではありません。むしろ問題はそのあとの法務局の審査です。ここで遺言書として認められない場合、遺言書が無い相続として遺産分割協議等の手続きが必要になってしまいます。
自筆証書遺言が有効となる要件は、本文と作成日付、作成者氏名をすべて自筆で書くこと、印鑑を押印することです。遺言書であることを明示する必要はありませんし、印鑑も実印である必要はありません。つまりこの書類はちゃんと自筆証書遺言の要件は満たしているのです。ただし、「相続させる」とか「遺言」など、普通遺言書に書かれているはずの表現が一切ありません。これはかなり難しいのではないかと思いつつ、検認手続きを済ませ登記申請をしたところ、法務局から一度も問い合わせがないまま登記完了予定日に無事登記が完了した旨の通知がきました。